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第9話 置き去りの朝

Auteur: marimo
last update Date de publication: 2026-06-10 00:05:38

朝、久遠ひかるが目を覚ましたとき、部屋は異様なほど静まり返っていた。

いつもなら聞こえるはずの、俊哉の足音も、キッチンで立てる物音もない。

耳が痛くなるほどの静けさ。

薄いカーテンの隙間から差し込む朝の光だけが、

昨夜の出来事が現実だったことを、無言で突きつけてくる。

――いない。

胸の奥が、ひやりと冷えた。

布団の中で、ひかるはしばらく動けなかった。

昨夜、夜のリビングで見てしまった光景が、

否応なく脳裏によみがえる。

黒崎俊哉と、相沢玲奈。

まるで互いの存在を確かめ合うように、

いやらしく絡み合っていた二人の姿。

湿った吐息。

押し殺した笑い声。

壁越しに聞こえてきた玲奈の甘えた声。

思い出した瞬間、

胃の奥がきりきりと痛んだ。

(もう……嫌だ)

その思いが、今朝ははっきりと言葉になった。

今までは、

「私が我慢すればいい」

そう思い込もうとしていた。

でも違う。

ここに縛られて生きることが、

もう耐えられなくなっていた。

ひかるはゆっくりと布団から起き上がる。

物置部屋の空気は冷たく、

薄い布団だけでは身体の芯まで冷え切っていた。

小さく息を吐き、

壁に手をつきながら立ち上がる
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